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第四十七局 プロの世界へ
2009年01月10日 星期六 19:31

第四十七局 プロの世界へ

ヒカル:伊角さんが九星会を辞めた?

和谷:それだけじゃないぜ。院生も辞めてた!卒業する人だって普通は3月まで残るのに。

ヒカル:九星会って伊角さんがずっと通ってた囲碁道場だろう?院生も九星会も辞めて、伊角

さんどうする気だろう?和谷、何か話したのか?

和谷:いや、電話とか掛けにくかったしな。それで、院生研修の日にちょっとのぞきに行った

んだオレ、そうしたら、信田先生から伊角さんやめたこと聞いちゃってさ。

ヒカル:先生、なんで、なんで言ってた?

和谷:そのほうが伊角さんにはいいかもしれないって。

ヒカル:なんで?

(先生:おい、熱いよ!

和谷:お、どうも。

先生:まあ、人それぞれなんだよ。彼の場合はそうして自分を冷静に見つめようとしたんだろ

う。

和谷:は。

先生:九星会や院生を辞めても、対局だけが碁の勉強というわけじゃないし。彼ぐらいのレベ

ルなら、棋譜を並べるだけでも十分勉強になる。一人になることも時には大事なことなんだよ

!)

和谷:だってさ。なんだかよくわかんねえよなあ!

ヒカル:先生勝手なこと言ってな。伊角さんもうプロ諦めちゃったかもしんないのに。

和谷:先生が伊角君は納得していない。来年もプロよって!

ヒカル:マジ?

和谷:うん、マジ顔でさ。自分の碁がここまでのものだなどと彼は決して思っていまい、だと

(先生:伊角君のことは伊角君に任せて、君は君で頑張らなくちゃ。プロなんだからね、もう

!)

和谷:って、言われちゃったよ。

佐為:ヒカルもですね。

ヒカル:うん。

和谷:それよりさ、今日はお前に記録係の仕事を教えてやろうと思ってさ。

ヒカル:記録係?

和谷:そういうのがあるんだよ!ま、学校に行ってるやつにはあんまり依頼来ないけどな。プ

ロの手合いは3次予選から棋譜をとるんだ。

ヒカル:棋譜のつけ方なら知ってるぜ、オレ。

和谷:時間もつけるんだよ!ほら、これ見本。

ヒカル:なんだこれ?

和谷:だから、一手に何分かけたとかその合計とか。

佐為:ヒカルには絶対無理ですよ、こんなの!

和谷:あと、秒読みもあるしな。

ヒカル:和谷、これやれるのか?

和谷:やれるよ!

ヒカル:何で和谷がこんなのやれるんだ?

和谷:なんだと?

ヒカル:こんなことでオレを呼び出したのかよ!

和谷:お前のために来てやってんだぜ!わかってんのか?

ヒカル:けどな。

和谷:しっかりやれよ!

佐為:いよいよヒカルが、棋士の世界へ足を踏み入れる!

ヒカル:それより、プロは対局だろう、対局!塔矢とオレはいつやれるんだ?和谷知らねえ?

和谷:知るか!

ヒカル:いろんな人と当たるんだろう?和谷とか、訝木さんとか、塔矢名人なんかともやって

るするの?

佐為:そう、そうです!あのものとも対局できるのですか?

和谷:お前な!トップの人との対局なんて5年上先だぜ!

ヒカル:ずっと勝ち続けてもだめなの?対局できないの?

佐為:どうなんです?

和谷:そりゃずっと勝ち続けりゃトップまで位置着くけど。現実無理だぜ!4段以下のプロな

んて2次予選までが精一杯だって。

ヒカル:でも、やっぱり繋がってるんだ!塔矢にも、塔矢のオヤジにも!

佐為:え、え!

ヒカル:もう同じ世界にいるんだ!いつかは対局できるんだ、オレ!

佐為:オレ?

ヒカル:若獅子戦の時の村上二段ともまたやりてえし。緒方九段とか、本因坊のじいちゃんと

も打ちてえなあ!

和谷:調子にのるな!

佐為:ヒカル?

ヒカル:でも、やっぱ一番は塔矢だな。塔矢と打ちてえ!

佐為:私は?

和谷:あいつはまだ低段者だから、運が良きゃ、早いうちにやれるけどさ。対局相手は抽選だ

からな。

ヒカル:抽選か。

佐為:私は?

ヒカル:あ、白川先生や森下先生とも本番の真剣勝負ができるんだ!

和谷:だから、高段者とはずっと先!

ヒカル:けど、繋がってんだろう!いつかは打てるってことだろう?だってオレたちは同じ世

界にいるんだから!

佐為:そうだ!繋がっているのは私ではない!ヒカル、ヒカルだけ!ヒカルはもう、私に打た

せてくれる気はないのだろうか?

座間:対局開始10分前か。

塔矢名人:おはようございます、座間先生!

座間:おはようございます!そういえば名人位防衛6連覇のお祝いをまだ言ってませんでした

ね。おめでとうございます、塔矢先生!

塔矢名人:どうも。

座間:しかし、棋聖戦の挑戦権は逃されましたな。やはり対局が多すぎて、お疲れなんですよ

、塔矢先生は。

塔矢名人:おっしゃる通り、棋聖戦の挑戦者決定戦敗れたのは疲れが残っていたからかも知れ

ません。ですがおかげさまで今日は心身ともに万全ですよ!

座間:心身ともに絶好調なのは息子さんのほうでしょう。負けなしじゃないですか。

塔矢名人:今20連勝です。

座間:はは。

塔矢名人:アキラの負けたのはプロになる直前の新初段シリーズ。座間先生、あなたとの対局

だけだ。

座間:では今日は、可愛い御坊ちゃんのリベンジですか?

塔矢名人:お先にどうぞ、座間王座!

男の人:どうなさいました、桑原先生?何か面白い記事でも?

桑原:プロ試験の結果がのっておるんじゃ。

男の人:プロ試験?

桑原:あのガキ受かっておる。そうか、進藤というのか!

男の人:進藤?誰です?

桑原:一度すれ違っただけのガキじゃよ!

男の人:すれ違っただけ?

桑原:そう、ちょうどあそこじゃ。半年前だったが、わしがエレベーターから出てきたら、院

生らしい小僧どもがいっぱい居ってるの。その時にな、ちょっとそのガキにただならぬ気配を

感じてんの。

男の人:ただならぬ気配ですか?そいつは楽しみだ!

桑原:あ、楽しみじゃ!緒方が言う通った新しい波かもしれんの。新しい波、ヌーベルバーグ

か。楽しみよな!

ヒカル:楽しみだぜ、本当!春、春からか。オレの初手合いって誰だろう。な、佐為?うん?

佐為?どうした?さ、打とうぜ!

佐為:ヒカルが他の棋士との対局を待つように、彼らもまたヒカルを待っているのだ。彼らが

待っているのは私ではない!ヒカル、ヒカル、ヒカルなのだ!

河合:今頃合格の報告かよ?もう、こっちゃとっくに知ってるぜ!

ヒカル:いたいよ!

河合:おせえんだよ!もっと早く来ねえか!お前が合格できたのもオレのおかげなんだからな

あ!

ヒカル:何で河合さんのおかげなんだよ!

寺内:なに?あの子プロ試験受かったって言ってるけど。

男の人:寺内さん、進藤君を知らないんだ。夏休みに毎日ここに通ってきたんだよ。

マスター:ちょっと前の週刊碁にプロ試験の結果が載ってるよ。ほら、これだ!

寺内:へえ?進藤ヒカル君か。

河合:お前がタイトル取ったら、こういえよ!今の自分があるのは、河合さんのおかげですっ

てよ!

ヒカル:なんだよ、それ?

男の人:タイトル?いいね!塔矢名人みたいに四つぐらいとっちまえ!

男の人:いやいや、もうじき五冠になるって。

ヒカル:五冠?塔矢名人が?

男の人:王座戦をせいしたらな。

男の人:第一局二局と連勝したから、可能性は高いよ!座間王座は苦しいね!

ヒカル:それで、どれだけ勝てば王座になれんの?

河合:王座戦は5番勝負だもんな。3勝すれば王座だ!

男の人:その合間をぬって天元の防衛戦もやってるし、大変だな、塔矢名人も。

ヒカル:天元?それもタイトルの一つなの?

男の人:そんなことも知らないんじゃ、ちょっとタイトル取るのは無理なんじゃねえか。

男の人:というか、この子本当にプロになるの?

河合:この!オレにあじかかすんじゃねえ!

ヒカル:河合さんには関係ないじゃん?

河合:何?

マスター:まあまあ、古い新聞はあげるけど、探して読みなさい!

ヒカル:ありがとう、マスター!あ、これ塔矢のオヤジだ!王座戦やるんだって。棋譜は載っ

てる。相手は座間王座。この人が王座なんだ?

佐為:ヒカル、棋譜が途中までしか載っていません。

ヒカル:えっと、続きは裏だ、裏!これは、と、天元戦第一局!天元のタイトルを持ってんの

は塔矢名人で、挑戦者は一柳棋聖か。ほら、これにも塔矢のオヤジも載ってる。

佐為:ヒカル、捲って、捲って!

ヒカル:えっと、塔矢名人6連覇?やっぱすげえんだな!

佐為:上に載せないで、隣において、ヒカル!

ヒカル:たく!えっと、ほかは。あとは、なんだ?日付もとんでばらばらか。これは8月、こ

っちは5月。このしたのは1月か。古い!塔矢だ!隣に立ってるのは座間王座。そうだ!新初

段シリーズだ、これ!

佐為:ヒカル!めくって!

ヒカル:そう、これだよ!この一局、みんなでモニターで見てたんだ!新初段シリーズか。そ

うか、こんなのがあるんだな!ドキドキしてきた!な、佐為!

佐為:ヒカル、そっちのほう開けて!

ヒカル:新初段シリーズか。そう、あの日雪が、雪が降っていたけ。今度はオレの番だ!オレ

もまずこの一戦から始まるんだ、年が明けたら。

天野:新年早々のインタビュー、すいませんでした。しかし五冠に並べた名人はもちろん、塔

矢君もこれからどんどん忙しくなるでしょうね。君の連勝が暮れに26でストップしてしまっ

たのは惜しいけれど、今年はより一層の活躍を期待しているよ。

アキラ:頑張ります。

天野:うん、じゃ、今日はこの辺で失礼しますか。どうもお邪魔しました!

塔矢名人:天野さん!

天野:はい?

塔矢名人:デビュー前の新人とトップ棋士を対局させる例の?

天野:新初段シリーズ!出ていただけるんですか?いや、去年もい昨年も、多忙を理由に名人

には断られちゃってますからね。実は遠慮してたんですよ。本当に出ていただけるんですか?

塔矢名人:その代り、相手を指名させてもらいたい!

天野:お。では、名人が指名したい程の新人がいると?

塔矢名人:彼と会うのは2年ぶりになるな。やっと出てきたか。

アキラ:まさか。

塔矢名人:進藤ヒカル!

天野:ええ?

ヒカル:な、なるほど。それでオレの反撃封じちゃうんだ!さ、佐為!最近怖いぜ、お前の顔

!な、な、ところでこの新聞、いい加減片付けないと、またお母さんに叱られるんだよ!そり

ゃ広げてないとお前が見られないのはわかるけど。

佐為:いいですよ、片づけても!そこに載っているあのものの棋譜はもう頭に入っていますか

ら。

ヒカル:おっと、お母さん買い物だった!はい、進藤です。あ、はい!オレ、いや、僕です。

新初段シリーズ?ええ、知ってます。はい!はい!あの、相手は?塔矢名人?はい、わかりま

した!聞いたか、佐為!オレ、塔矢名人と対局するんだ!ほら、新初段シリーズ!去年見たろ

う、塔矢と座間王座の!そうだ、塔矢、あいつ、あいつ見に来るかな!いや、絶対来る!よし

、あいつの目の前でオレのいまの力を見せてやる!

佐為:ヒカル!

ヒカル:何?

佐為:私に、私に打たせてください!

ヒカル:ええ?

佐為:その対局、私に!


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