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第四十七局 プロの世界へ ヒカル:伊角さんが九星会を辞めた? 和谷:それだけじゃないぜ。院生も辞めてた!卒業する人だって普通は3月まで残るのに。 ヒカル:九星会って伊角さんがずっと通ってた囲碁道場だろう?院生も九星会も辞めて、伊角 さんどうする気だろう?和谷、何か話したのか? 和谷:いや、電話とか掛けにくかったしな。それで、院生研修の日にちょっとのぞきに行った んだオレ、そうしたら、信田先生から伊角さんやめたこと聞いちゃってさ。 ヒカル:先生、なんで、なんで言ってた? 和谷:そのほうが伊角さんにはいいかもしれないって。 ヒカル:なんで? (先生:おい、熱いよ! 和谷:お、どうも。 先生:まあ、人それぞれなんだよ。彼の場合はそうして自分を冷静に見つめようとしたんだろ う。 和谷:は。 先生:九星会や院生を辞めても、対局だけが碁の勉強というわけじゃないし。彼ぐらいのレベ ルなら、棋譜を並べるだけでも十分勉強になる。一人になることも時には大事なことなんだよ !) 和谷:だってさ。なんだかよくわかんねえよなあ! ヒカル:先生勝手なこと言ってな。伊角さんもうプロ諦めちゃったかもしんないのに。 和谷:先生が伊角君は納得していない。来年もプロよって! ヒカル:マジ? 和谷:うん、マジ顔でさ。自分の碁がここまでのものだなどと彼は決して思っていまい、だと ! (先生:伊角君のことは伊角君に任せて、君は君で頑張らなくちゃ。プロなんだからね、もう !) 和谷:って、言われちゃったよ。 佐為:ヒカルもですね。 ヒカル:うん。 和谷:それよりさ、今日はお前に記録係の仕事を教えてやろうと思ってさ。 ヒカル:記録係? 和谷:そういうのがあるんだよ!ま、学校に行ってるやつにはあんまり依頼来ないけどな。プ ロの手合いは3次予選から棋譜をとるんだ。 ヒカル:棋譜のつけ方なら知ってるぜ、オレ。 和谷:時間もつけるんだよ!ほら、これ見本。 ヒカル:なんだこれ? 和谷:だから、一手に何分かけたとかその合計とか。 佐為:ヒカルには絶対無理ですよ、こんなの! 和谷:あと、秒読みもあるしな。 ヒカル:和谷、これやれるのか? 和谷:やれるよ! ヒカル:何で和谷がこんなのやれるんだ? 和谷:なんだと? ヒカル:こんなことでオレを呼び出したのかよ! 和谷:お前のために来てやってんだぜ!わかってんのか? ヒカル:けどな。 和谷:しっかりやれよ! 佐為:いよいよヒカルが、棋士の世界へ足を踏み入れる! ヒカル:それより、プロは対局だろう、対局!塔矢とオレはいつやれるんだ?和谷知らねえ? 和谷:知るか! ヒカル:いろんな人と当たるんだろう?和谷とか、訝木さんとか、塔矢名人なんかともやって るするの? 佐為:そう、そうです!あのものとも対局できるのですか? 和谷:お前な!トップの人との対局なんて5年上先だぜ! ヒカル:ずっと勝ち続けてもだめなの?対局できないの? 佐為:どうなんです? 和谷:そりゃずっと勝ち続けりゃトップまで位置着くけど。現実無理だぜ!4段以下のプロな んて2次予選までが精一杯だって。 ヒカル:でも、やっぱり繋がってるんだ!塔矢にも、塔矢のオヤジにも! 佐為:え、え! ヒカル:もう同じ世界にいるんだ!いつかは対局できるんだ、オレ! 佐為:オレ? ヒカル:若獅子戦の時の村上二段ともまたやりてえし。緒方九段とか、本因坊のじいちゃんと も打ちてえなあ! 和谷:調子にのるな! 佐為:ヒカル? ヒカル:でも、やっぱ一番は塔矢だな。塔矢と打ちてえ! 佐為:私は? 和谷:あいつはまだ低段者だから、運が良きゃ、早いうちにやれるけどさ。対局相手は抽選だ からな。 ヒカル:抽選か。 佐為:私は? ヒカル:あ、白川先生や森下先生とも本番の真剣勝負ができるんだ! 和谷:だから、高段者とはずっと先! ヒカル:けど、繋がってんだろう!いつかは打てるってことだろう?だってオレたちは同じ世 界にいるんだから! 佐為:そうだ!繋がっているのは私ではない!ヒカル、ヒカルだけ!ヒカルはもう、私に打た せてくれる気はないのだろうか? 座間:対局開始10分前か。 塔矢名人:おはようございます、座間先生! 座間:おはようございます!そういえば名人位防衛6連覇のお祝いをまだ言ってませんでした ね。おめでとうございます、塔矢先生! 塔矢名人:どうも。 座間:しかし、棋聖戦の挑戦権は逃されましたな。やはり対局が多すぎて、お疲れなんですよ 、塔矢先生は。 塔矢名人:おっしゃる通り、棋聖戦の挑戦者決定戦敗れたのは疲れが残っていたからかも知れ ません。ですがおかげさまで今日は心身ともに万全ですよ! 座間:心身ともに絶好調なのは息子さんのほうでしょう。負けなしじゃないですか。 塔矢名人:今20連勝です。 座間:はは。 塔矢名人:アキラの負けたのはプロになる直前の新初段シリーズ。座間先生、あなたとの対局 だけだ。 座間:では今日は、可愛い御坊ちゃんのリベンジですか? 塔矢名人:お先にどうぞ、座間王座! 男の人:どうなさいました、桑原先生?何か面白い記事でも? 桑原:プロ試験の結果がのっておるんじゃ。 男の人:プロ試験? 桑原:あのガキ受かっておる。そうか、進藤というのか! 男の人:進藤?誰です? 桑原:一度すれ違っただけのガキじゃよ! 男の人:すれ違っただけ? 桑原:そう、ちょうどあそこじゃ。半年前だったが、わしがエレベーターから出てきたら、院 生らしい小僧どもがいっぱい居ってるの。その時にな、ちょっとそのガキにただならぬ気配を 感じてんの。 男の人:ただならぬ気配ですか?そいつは楽しみだ! 桑原:あ、楽しみじゃ!緒方が言う通った新しい波かもしれんの。新しい波、ヌーベルバーグ か。楽しみよな! ヒカル:楽しみだぜ、本当!春、春からか。オレの初手合いって誰だろう。な、佐為?うん? 佐為?どうした?さ、打とうぜ! 佐為:ヒカルが他の棋士との対局を待つように、彼らもまたヒカルを待っているのだ。彼らが 待っているのは私ではない!ヒカル、ヒカル、ヒカルなのだ! 河合:今頃合格の報告かよ?もう、こっちゃとっくに知ってるぜ! ヒカル:いたいよ! 河合:おせえんだよ!もっと早く来ねえか!お前が合格できたのもオレのおかげなんだからな あ! ヒカル:何で河合さんのおかげなんだよ! 寺内:なに?あの子プロ試験受かったって言ってるけど。 男の人:寺内さん、進藤君を知らないんだ。夏休みに毎日ここに通ってきたんだよ。 マスター:ちょっと前の週刊碁にプロ試験の結果が載ってるよ。ほら、これだ! 寺内:へえ?進藤ヒカル君か。 河合:お前がタイトル取ったら、こういえよ!今の自分があるのは、河合さんのおかげですっ てよ! ヒカル:なんだよ、それ? 男の人:タイトル?いいね!塔矢名人みたいに四つぐらいとっちまえ! 男の人:いやいや、もうじき五冠になるって。 ヒカル:五冠?塔矢名人が? 男の人:王座戦をせいしたらな。 男の人:第一局二局と連勝したから、可能性は高いよ!座間王座は苦しいね! ヒカル:それで、どれだけ勝てば王座になれんの? 河合:王座戦は5番勝負だもんな。3勝すれば王座だ! 男の人:その合間をぬって天元の防衛戦もやってるし、大変だな、塔矢名人も。 ヒカル:天元?それもタイトルの一つなの? 男の人:そんなことも知らないんじゃ、ちょっとタイトル取るのは無理なんじゃねえか。 男の人:というか、この子本当にプロになるの? 河合:この!オレにあじかかすんじゃねえ! ヒカル:河合さんには関係ないじゃん? 河合:何? マスター:まあまあ、古い新聞はあげるけど、探して読みなさい! ヒカル:ありがとう、マスター!あ、これ塔矢のオヤジだ!王座戦やるんだって。棋譜は載っ てる。相手は座間王座。この人が王座なんだ? 佐為:ヒカル、棋譜が途中までしか載っていません。 ヒカル:えっと、続きは裏だ、裏!これは、と、天元戦第一局!天元のタイトルを持ってんの は塔矢名人で、挑戦者は一柳棋聖か。ほら、これにも塔矢のオヤジも載ってる。 佐為:ヒカル、捲って、捲って! ヒカル:えっと、塔矢名人6連覇?やっぱすげえんだな! 佐為:上に載せないで、隣において、ヒカル! ヒカル:たく!えっと、ほかは。あとは、なんだ?日付もとんでばらばらか。これは8月、こ っちは5月。このしたのは1月か。古い!塔矢だ!隣に立ってるのは座間王座。そうだ!新初 段シリーズだ、これ! 佐為:ヒカル!めくって! ヒカル:そう、これだよ!この一局、みんなでモニターで見てたんだ!新初段シリーズか。そ うか、こんなのがあるんだな!ドキドキしてきた!な、佐為! 佐為:ヒカル、そっちのほう開けて! ヒカル:新初段シリーズか。そう、あの日雪が、雪が降っていたけ。今度はオレの番だ!オレ もまずこの一戦から始まるんだ、年が明けたら。 天野:新年早々のインタビュー、すいませんでした。しかし五冠に並べた名人はもちろん、塔 矢君もこれからどんどん忙しくなるでしょうね。君の連勝が暮れに26でストップしてしまっ たのは惜しいけれど、今年はより一層の活躍を期待しているよ。 アキラ:頑張ります。 天野:うん、じゃ、今日はこの辺で失礼しますか。どうもお邪魔しました! 塔矢名人:天野さん! 天野:はい? 塔矢名人:デビュー前の新人とトップ棋士を対局させる例の? 天野:新初段シリーズ!出ていただけるんですか?いや、去年もい昨年も、多忙を理由に名人 には断られちゃってますからね。実は遠慮してたんですよ。本当に出ていただけるんですか? 塔矢名人:その代り、相手を指名させてもらいたい! 天野:お。では、名人が指名したい程の新人がいると? 塔矢名人:彼と会うのは2年ぶりになるな。やっと出てきたか。 アキラ:まさか。 塔矢名人:進藤ヒカル! 天野:ええ? ヒカル:な、なるほど。それでオレの反撃封じちゃうんだ!さ、佐為!最近怖いぜ、お前の顔 !な、な、ところでこの新聞、いい加減片付けないと、またお母さんに叱られるんだよ!そり ゃ広げてないとお前が見られないのはわかるけど。 佐為:いいですよ、片づけても!そこに載っているあのものの棋譜はもう頭に入っていますか ら。 ヒカル:おっと、お母さん買い物だった!はい、進藤です。あ、はい!オレ、いや、僕です。 新初段シリーズ?ええ、知ってます。はい!はい!あの、相手は?塔矢名人?はい、わかりま した!聞いたか、佐為!オレ、塔矢名人と対局するんだ!ほら、新初段シリーズ!去年見たろ う、塔矢と座間王座の!そうだ、塔矢、あいつ、あいつ見に来るかな!いや、絶対来る!よし 、あいつの目の前でオレのいまの力を見せてやる! 佐為:ヒカル! ヒカル:何? 佐為:私に、私に打たせてください! ヒカル:ええ? 佐為:その対局、私に! |